吃音改善に必要な、智慧と慈悲③

以前、同じタイトルで①②と書いていますが、最近カウンセリングに、セルフ・コンパッション(自分への慈悲の心、思いやりの心)を取り入れつつあるので、今現在の見地から書いてみます。
以前の投稿はこちらです。
吃音改善に必要な、智慧と慈悲①
吃音改善に必要な、智慧と慈悲②

以前書いているように、この二つは仏教の言葉です。仏教の根幹と言ってもいいでしょう。
「智慧」とは、「自分」「エゴ」「思い込み」「先入観」という色眼鏡を外して、ものごとをありのままに見て、苦しみのもとである執着から離れること。ものごとの本質を見る力のことです。
「慈悲」とは、一言でいうと、思いやりなのですが、「100%相手の立場になって考える」「相手の問題を自分の問題として捉える」とも言えます。
「スッパ二パータ」の「メッタスッパ」というお経には、「あたかも母が自分の一人子を命をかけて護るように」と例えられています。親は、自分の子供が苦しんでいたら、変わってあげたいと思いますよね、それは自分のことのように感じているからで、これは慈悲の心だと言えます。
そして、「智慧」と「慈悲」は、別々のものではなく、深くつながっていると、仏教では教えています。

仏教では、苦しみの元となるのは「自分」や「エゴ」であり、「智慧」を得て「我執」を離れると、おのずと他者を尊重し、「慈悲」の心が芽生えると説かれています。
そして「慈悲」の心が育つと、益々本質を見る力である「智慧」が増してくる。お互いに相乗効果があるわけです。

でもここまで書いてきて「これがなぜ、吃音と関係あるの?」と思われるかもしれませんね。
吃音の臨床で、今注目されているのは「マインドフルネス」と「セルフ・コンパッション」です。
「マインドフルネス」とは、仏教の修行でいうと「禅定」や「正念」と言えます。
心を定める→注意集中力を高め、自分の判断を入れずに現実(あるがまま)を見る修行です。
「セルフ・コンパッション」とは「自分へ慈悲の心を向ける」ことです。

つまり、マインドフルネスとセルフ・コンパッションは、「智慧」と「慈悲」とも言えるのですね。

ただ、先ほど書いたように「慈悲」は他に向ける思いやりでしたね。
セルフ・コンパッションは、自分に向ける思いやり。
ここはちょっと矛盾してませんか?実は私もそこが疑問でした。

これは、仏教では「自利」と「利他」と説明しています。
「自利」とは自分のため。「利他」とは他のためですね。
そして「自利」と「利他」は繋がっていて、自分を利する心が、そのまま他を利する心になる。
また、他を利する心がそのまま自分を利する心になると教えているのです。
これを「自利利他円満」と言います。

私はよくX(Twitter)で「自分だけ吃音を治したいと思っている人はうまくいかない」と言っていますが、その理由はここにあります。
また、今までの経験からしても、他を思いやる心がある人は、自分の吃音に対しても、敵視するのではなく、思いやりの心を持つことができ、その結果症状が軽減します。
(廣瀬カウンセリングでは、それを「すみれの花を見るように」というメタファーで教えています。)

今、セルフ・コンパッションの創始者のクリスティン・ネフの本を読んでいるのですが、内容が素晴らしいので、読み終わったらブログに書きたいと思います。
吃音の臨床も、マインドフルネスもとても大事なのですが、セルフ・コンパッションと組み合わせると、かなり効果が上がると言われています。
その理由は、やはり「智慧」と「慈悲」の双修だと思うのです。

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