2015年から吃音カウンセリングをスタートし、2020年に開業。
これまで多くの吃音者の悩みに関わってきました。
吃音者はお互いに知り合うことがほとんどないので
皆さんは一人で悩んでいらっしゃったかたが多かったのではないでしょうか?
学校の事、就職への不安、会社での評価、人間関係など、、、。吃音者の悩みはなかなか理解されませんよね。

①私のカウンセラーへの道のり。

私自身も吃音者です。ほぼ症状は消えましたが、今でも少し吃ります。
幼少期より、授業の音読、挨拶、お店での注文、電話、等で悩んできましたし、
将来自分が働いているところなど想像すら出来ませんでした。

私が吃音カウンセリングに出会ったのは2011年。あるセルフヘルプグループに参加してからです。


カウンセリングの内容は難しくてよく分からなかったのですが、
皆が楽しそうだからもっと来てみたいな、が感想でした。
そんな感じで何となく参加していたら。カウンセラーの先生から「もう卒業だ。」と、、、。
「え?まだ治っていないのに、、。」というのが正直な気持ちでしたが、その時に先生から
「あなたはカウンセラーに向いているから、それに向けた勉強をして欲しい。」
と言われました。それからカウンセラーに向けての学習が始まりました。

②吃音が治るか、治らないかについて。

吃音の原因はまだはっきりと分かっていません。一般的には8割は遺伝や体質と言われています。
幼児の吃音は、リッカムプログラムやDCMなど、有効性のある治療法がありますが、
成人の吃音には、医学的に確立した治療法がまだありません。

吃音は以下の要因がお互いに影響しあって発症すると言われています。
体質的要因(子ども自身が持つ吃音になりやすい体質的な特徴)
発達的要因(身体・認知・言語・情緒が爆発的に発達する時期の影響)
環境要因(周囲の人との関係や生活上の出来事)

ここからは、私の見解となりますが、様々な研究や、私のカウンセリングの経験からすると、
幼児の吃音の発吃は、遺伝によるものが大きいが、成長するに従い、徐々に心理的な問題になっていくと考えています。
幼児の吃音は、発症後2~4年で7~8割は自然治癒するといわれています。
残りの3~2割の幼児が自然治癒しない理由は、①その幼児の遺伝的要素が強い。②環境が悪く心理的苦痛を受けている。の二つが考えられます。
私のところにカウンセリングを受けに来られる方は、100%②の環境が悪く、親に吃音を受け入れてもらえなかったり、友達に笑われたり、からかわれたりして傷ついきたかたです。
もちろん、①遺伝的要素と②心理的要素が複雑に絡み合っていることも考えられます。
ただ、ここで注目して頂きたいのは「ひとりごとではどもらない」ことです。
どんなに吃音症状が重い人でも、一人になると突然流暢に話し出すのです。
これは②心理的要因と言っていいと思います。
(稀に一人でもどもるかたはいらっしゃいます。これは、私が診てきた経験上、一人の時に皆の前で必死になって話す練習をしてきかたが多いです。深く悩み、気持ちがネガティブなまま、何とか治そうと追い詰められた気持ちで練習すると、練習でもどもるようになり、それを繰り返すと、一人でもどもるように条件付けられると考えています。)
私は、心理カウンセリングによって吃音はかなり改善されると思っています。


③具体的なカウンセリングの方法について。

私が考案した「マインドフルネス吃音改善法」と、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)を両立して行います。

マインドフルネス吃音改善法は、今のところ成人の吃音を克服できる唯一のカウンセリング技法です。
廣瀬カウンセリングとマインドフルネスの考え方を基礎としています。
廣瀬カウンセリングについてはこちらの論文をご覧ください。
グループカウンセリングを通じた吃音の克服について。「廣瀬カウンセリング」の取り組み。
(論文ではグループカウンセリングについて記述されていますが、個別カウンセリングでも可能です。)
なお、私は2015~2021年廣瀬カウンセリングのカウンセラーでしたが、その後独立し、現在はカウンセリングの交流はありませんので、このサイトに記述している「廣瀬カウンセリング」とは、私が在籍中に行っていたカウンセリングになります。

マインドフルネスとは、過去や未来、先入観や思い込みにとらわれることなく、目の前の現実に集中して、ありのままを受け入れる心の状態やトレーニングのことです。

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)は、マインドフルネスを組み込んだ第三世代の認知行動療法です。
ACTは科学的に研究され、さまざまな症状(不安、うつ病、強迫性障害、対人恐怖症、全般性不安障害、統合失調症、境界性パーソナリティー障害、職場でのストレス、慢性の痛み、薬物使用、癌に対する心理的な適応、てんかん、体重管理、禁煙、糖尿病の自己管理など)に効果があると認められています。
最近は吃音の臨床にも取り入れ始めていて、社交不安障害や吃音の症状自体の軽減も報告されています。

成人期の吃音に対するアクセプタンス&
コミットメント・セラピーによる心理・社会的介入の可能性

ACTで重要なのは、価値のある行動をとることです。
人生はなかなかうまくいかない。
そんな時に、自分のコントロール出来ないものは受け入れ(acceptance)人生を豊かにする行動をとることを
自己決定する(commitment)するセラピーです。

アクセプタンスは、つらい思考や感情に効果的に対処し、そこから受ける影響が小さくてすむような心理的スキルを整える。つまりマインドフルネススキルです。そして、本人にとって本当に重要で意味のあること、その人の価値を明らかにするのを助ける。
そして、その価値に導かれ、動機づけられ、触発されながら目標を設定し人生を豊かにする行動をとることです。

マインドフルネス吃音改善法とACTは、共通点が多くありますが、吃音の克服を目的とするマインドフルネス吃音改善法に対して、ACTは苦しみがあってもしなやかに受け止め、有意義な人生を送るようになるためのカウンセリングです。
私は、この二つを組み合わせることによって、お互いの良いところを引き出し、吃音を克服するしなやかな心と、吃音症状の改善の両立するカウンセリングを行います。

カウンセリングの初期は、出来れば週一か毎月2回くらいの方が効果はあります。
徐々に回数は減らして、ご自分で対処できるようにワーク(主にマインドフルネス)をお願いします。
ご希望があれば「マインドフルな吃音の会」という、グループカウンセリングへの入会をおすすめしています。

あなたが吃音の改善と共に素晴らしい人生を歩むことを願っています。