マインドフルネスで吃音は改善する?
マインドフルネスの定義。
マインドフルネスという言葉は、今やほとんどの方が聞いたことがあるのではないでしょうか。
今やGoogleやAppleだけでなく、他の一流企業でも導入され成果を挙げていると言われています。
マインドフルネスの定義は、今この瞬間の体験に注意を向け、評価をせず、とらわれのない状態で観ることです。
これを読まれて「あれ?」と思われたかた、鋭いです。(笑) そう、前回の投稿 見ると観るの違いの吃音の観察に似ていますね。そうです、マインドフルネスと吃音の観察は、本質的に同じです。
マインドフルネスの2大要素は
アウェアネス(気づき)
外から入ってくる情報と自らの内部から湧いてくる情報、
いずれにも自由に注意を向けられる状態に近づいていく。
アクセプタンス(受容)
得られた情報に対し、批判したり先入観で決めつけたりせず、ありのままに受け止められるようになること。
ではなぜマインドフルネスは吃音の改善に役に立つのでしょうか?
マインドフルネスは「今、ここ」
吃音者はどもりそうなとき、どもっているとき、頭の中はどうなっているでしょうか?「どもったらどうしよう」「恥ずかしい」「相手からどう思われるかな」
そんな感じでしょうか?私も吃音者だからよく分かります。ただ、これらはどれも過去の嫌な記憶を思い出したり、まだ起こっていない先のことを想像しているに過ぎません。つまり「今」じゃないんです。
マインドフルネスはこの「今」から離れてしまった意識を取り戻す効果があります。例えば、どもっているときに「どう思われているだろうか」とか「バカにされるにちがいない」という実際にはおこっていない空想に対して、今の現実にフォーカスすることができるようになります。
そうすると、「どもった割には相手はなんとも思っていないんだな」とか「話がちゃんと通じてよかった。」など周りが見えてくるようになります。
マインドフルネスと内受容感覚。
それと、吃音の観察に関していうと「今、自分の外側と内側で何がおこっているか?」に集中することがマインドフルネスですが、特に内側から湧いてくる情報がとても大切で、それを心理学では「内受容感覚」と言っています。(これに対して、身体の外側からの刺激を五感を使って感じることを「外受容感覚」と言います。)
私たちは、「お腹が空いた」、「心臓がドキドキする」、「胃がムカムカする」など、身体の中の感覚を感じて日常を過ごしています。このような身体の中の感覚「内受容感覚」と呼びます。内受容感覚には個人差があり、身体の中の感覚に気づきやすい人から、気づきにくい人までいることがわかっています。内受容感覚にはどのような役割があるのでしょうか。これまでの研究によって、内受容感覚に鈍感である人は、嬉しい、悲しいなど自分の感情に気づきにくいことが示唆されています。このことから近年では、内受容感覚の敏感さと、自分ではなく他人の感情などの認識力との関連についても、研究者の関心が高まっています。
身体の中の感覚に気づきやすい人は、表情模倣が起こりやすく他人の視線にも敏感か? – 内受容感覚と社会性の関係より抜粋。
また、内受容感覚が敏感な人ほど、他人の気持ちも理解できるそうですし、マインドフルネスによって、内受容感覚を高めることが高めることができると、こちらのサイトに示されています。
内受容感覚を高める方法とは?乳児も大人も自身の「体内」への意識が、社会性スキルに影響する【武蔵野大学・今福准教授】
日本語には、「腹を割って話す。」「胸を開く」「腹黒い」「胸がスカッとする」など、内受容感覚から出る言葉が多く、どれも自分の内側の感情を表していますね。
吃音者は、頭でっかちになっている。
吃音者は自分の内側の感覚に対しては鈍感な状態な人が多いと思います。
カウンセリング心理学では、「思考は頭」、「感情は身体」に現れると考えます。吃音症状は、脳の神経の伝達がうまくいかないところから起こりますが、成人の場合は心理的要因がほとんどと言っていいと思います。
吃音の心理的要因とは、主に「予期不安」と「後悔」ですが、それはどちらも「頭で考えていること」です。そして「今、ここ」で起こっていることではないのです。
「今、ここ」で起こっていることの一つが「「身体の感覚」です。
吃音の症状が出ているときに、「身体感覚」に注意を向けることは,[今、ここ」への気づきにつながります。
アクセプタンス(受容)
そしてアクセプタンス(受容)ですが、これは前回の投稿に書いたように評価しないであるがままを受け入れることが大切です。
なぜあるがままを受け入れることが大切かというと、先入観や思い込みがあると、内受容感覚をちゃんと感じとることが出来ません。
しかし、このあるがままを受け入れることが出来てくると自然と変わることが出来ます。
ここは、吃音の受容か改善かに書いたように、カールロジャーズの「自分のありのままを受け入れた時に、私は変わることができた」という考えがベースになっています。
感じ取る力。
また、感じることについての感受性も高める必要があります。
例えば野に咲く花を観て、全く何も感じない人は身体からのメッセージも感じとるのは難しいかもしれません。
これは以前所属していたグループの他のカウンセラーから聞いた話ですが、ある重度の吃音者に「今まで印象に残った風景は?」と聞いたところ、「ゲームの背景」と答えたそうです。最近のゲーム画像はきれいですからね。(笑)
これはこれで問題はないのですが、普段観ている自然にも印象に残るものがあるはずです。もの見方が偏ったり、硬直化したりすると、一つの視点からしかものが見えず奥にあるものを感じ取れないということになってきます。
こういう傾向を改善するにもマインドフルネスは有効です。
実際に私のクライアントさんには、何気ない風景も観察するようにお伝えしていますが、実践している方の吃音は改善する傾向にあります。
私のカウンセラーだった先生のお話ですが、花をきれいだなと観るようになったら吃音が改善したという例もあります。
ここまで、マインドフルネスの有効性について書いてきましたが、マインドフルネスはもともと仏教の瞑想がベースになっているので奥が深く、これだけでは説明できないところもあります。やはり、「智慧」と「慈悲」がポイントとなりますのでそれはまたの機会に投稿します。
まとめ。
まとめると。
マインドフルネスは吃音の改善に有効である。
それは「今」集中することと、自分の内側におこっている「内受容感覚」をあるがままを受け入れることによって、心理的変容を促す。
成人の吃音は、心理的要因が大きいので、その変容により吃音が改善する。
ということになります。
カウンセリングやこういう投稿を読むことはきっかけに過ぎないので、何かを気づいたら、ものの見方を変えてみるとか、何かを感じてみるようにするとか
日頃の取り組みが大切です。