バカの壁

先日、ある仏教関係の本を読んでいて、面白いことが書いてあったので抜粋してみます。

著者は釈徹宗さんという宗教学者で浄土真宗本願寺派の僧侶でもあります。

内容的には養老孟司氏の「バカの壁」についてで、「バカの壁」は私も読んでいないのですが、要は脳の仕組みの話だそうです。

私達の脳はある枠組みがしっかり出来てしまうとそれ以外のことは認識しようとしない。脳内に壁が出来てしまうと壁の外は理解出来ないという話です。

養老氏は,自分自身で枠組みを作ってしまって、枠の外側を認識出来なくなる脳の仕組みを「バカの壁」と名づけました。

釈徹宗さんは「バカの壁」を初めて読んだ時に「まるで仏教だ」と思ったそうです。

ここからは抜粋です。

「仏教は、我々は必ず自分の都合という枠組みを通して物事を認識している、という立場に立ちます。
例えば外の景色にしても、自分の枠組みを通して認識していると捉えます。

嬉しいことがあれば、いつも通っている道がいつになく新鮮に見える。
一方悩み事があれば、周りの景色も目に入らない訳です。

周りの景色を自分の枠組みを通して認識しているわけです。

だから、自分は何を大事に思って生きているか?逆に何をいらないと思って生きているか?常日頃から自分の枠組みを点検し、心と身体とトレーニングして、枠組みが強くならないようにする。それが仏教の基本的な立場ということになります。(中略)

では苦しみの原因とは何かといいますと、先述したように「バカの壁」です。

ここでは「自分の都合」といたしましょう。

原因である自分の都合が大きければ大きいほど、結果である苦しみや悩み憎しみが大きくなります。

仏教は因果律に基づきますので、原因である自分の都合を小さくすればするほど、結果である苦しみや悩み憎しみも小さく出来るわけです。

そうすることによって、苦しみの連鎖を安らぎの連鎖へと転換していく。

心と身体をトレーニングしていくというのが仏教の基本的なメインラインの部分ということになります。(中略)

仏教とは「自分はどんな枠組みで生きているのか」を耐えず点検し、その枠組みを出来るだけ強くしないように心身のトレーニングをするタイプの宗教と言えます。

心身のトレーニングによって、自分を起点としない認識が可能になります。

それは苦を克服する王道です。」

例えば、これは好きこれは嫌いということも自分の枠組みなのかも知れませんね。

枠組みがはずれた時は、いつもの風景がきれいで感動するかも知れない。

自分の吃音は他人には不快だと思っていたのも、自分だけの枠組みかも知れませんね。
また、吃音の観察も、嫌いな吃音だから難しいと思いますが、
この枠組みを緩めれば、きれいな風景と同じように観察しやすくなると思います。

そしてここもポイントです。

「原因である自分の都合を小さくすればするほど、結果である苦しみや悩み憎しみも小さく出来るわけです。」

「心身のトレーニングによって、自分を起点としない認識が可能になります。」

この「自分を起点としない認識」というのも、重要ですね。

私は、セルフヘルプグループで、少なからず吃音者の変容を見てきましたが、
大きく変容する人は、決まって「他の為に何かをしていた人」です。
自分の吃音を治すことを第一にしている人は「自分の都合」が大きくなっている訳ですから、努力すればするほど、苦しみは増すのですね。
もっと極端に言うと、自分はどうでもいいので、周りの吃音が治ってほしいとか、
周りに何かしてあげたいと思っている人は、変容していきます。

ある方の体験です。
「グループカウンセリングを進めてうちに、自分の吃音はどうでもよい。
自分より困っているかたに支援をしたいという感じが身体の中から出てきたのです。
カウンセリングの場所も、良い場所は譲ってあげ、発言も話したい人に時間をあげるようにしました。」



これが変容です。頭で考えていても決してこうはなりません。
感情や情緒に働きかけるカウンセリングを受けてきたからこそ
、身体の内側からこういう気持ちがこみあげてきたのですね。

また、自分の起点とした認識から、相手を起点とした認識に変わっていきますので、苦しみが減ってくるというわけですね。

結果、吃音を意識することは減ってきて、苦手電話や人前でも、なぜだかわからないけど
話せるようになったそうです。

私達は自分がかわいいので、どうしても自分のための努力をしてしまいます。
しかし、それは少なくとも吃音に関しては、必要のない努力です。
今の自分にとって、必要な努力とは何か?
それを自覚するのためにカウンセリングがあります。

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バカの壁” に対して2件のコメントがあります。

  1. 道原文雄 より:

    お久しぶりです。
    道原です。
    馬田さんのブログはたまに拝見していますが、どんどん境地が高くなっていく様を見ていて、廣瀬にも拡げてほしいなぁと思っています。
    実は今の教室には関わっていません。
    というのは、コロナを恐れていてリモートだけに固執していてグループカウンセリングができていないからです. 
    春になれば、巣鴨教室が再開されることを祈願しています。

    1. stardust より:

      道原さん。お久しぶりです!
      お読みいただき、ありがとうございます。
      教室には関わっていないんですね。
      私はほぼ毎月zoom懇親会に出ています。(笑)
      昨日も出ました。後藤さんも出ていましたよ。
      リモートだけになっているのは、蔓延防止が出ているからで、解除されればまた言友会館で行われると思います。
      zoomとのハイブリッドになるでしょうが。
      みんな頑張っているので、そのうち教室に参加して、そのあと飲みましょう!
      もう30周年ですからね。

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