吃音の改善には「心の勢い」が必要。
UnsplashのMiguel Brunaが撮影した写真
私は、吃音のカウンセリングにマインドフルネスを用いています。
マインドフルネスは、主に仏教の禅の一部を医療用のプログラムにしたものですが、そのとらえ方にはいろいろとあり、主に仏教側からみたマインドフルネスと、医療側からみたマインドフルネスに分かれると思います。
私は、どちらかというと仏教側からの認識が強いので、医療的なマインドフルネス考え方には、少し違和感を感じるところがあります。
ただ、マインドフルネス創始者である、ジョンカバットジンは若いころからずっと禅を続けているそうですので、その点では本質的にはあまり変わらないのかなとも思います。
しかし、禅と比べて、マインドフルネスには足りないものがあるようです。それが「モメンタム」と言われるものです。
「モメンタム」とは「心の勢い」のことです。
一般的に、マインドフルネスで得られるものは「癒し」だと言われます。
欧米人のエリートで、マインドフルネスがとても人気なのは、この「癒し」の効果が必要だったからではないかと思います。
欧米人、特にエリートは自己肯定感が高く、心の勢いは元々持っています。
ただ、そんな日常で疲れた時に、マインドフルネスの「癒し」は、持ってこいの効果だったのでしょう。
それに対して、日本人は自己肯定感が低く、仕事に対しても、欧米のエリートと比較すると、心の勢いを持っている人は少ないと思います。
だから、マインドフルネスを行っても、癒しはあるけど、自己肯定感は上がらず、いまいち効果が分からない人も多いと思います。
また、これは来月の吃音フェスティバルの発表で少し触れますが、マインドフルネスには「現実をよく見る」という要素もあります。
よく「あるがままを見る」と言われ、ニュアンス的に、優しく批判せずに見るように解釈されがちですが、本来は「如実に観る」が正解です。
例え現実が厳しくても、「その通りに見て自分勝手な判断を入れない」ものの見方です。これは結構厳しいことだと思います。
マインドフルネスによる、癒しの部分を「母性」だとすれば、勢いの部分は「父性」です。
実は、カウンセリングにも「母性」と「父性」の両方が必要で、それは、子供にとって、母親の愛情と父親の愛情の両方が必要なのと同じだと思います。
最初は、優しく話を聴いて、信頼関係が出来てきたら、はっきりと言う時もあります。
私の先生は、「あなたたちは吃音者なのに、なぜ吃音者ではないふりをするのですか?(吃音を隠そうとするのか?)」と仰っていました。
その時は、カチンとくるのですが、ナニクソ!と思いながらも、図星ですから認めざるを得ませんでした。
これは「癒し」ではなく、ある意味「心の勢い」が求められる部分だと思います。
仏教に於いて、大事なのは「智慧」と「慈悲」と言われますが、これを「陽」と「陰」もしくは「父性」と「母性」と言うことも出来ますし、「心の勢い」と「癒し」とも言えると思います。
そして、「智慧」と「慈悲」は本来は一つのものなので、自分や他人に対して優しい人は、自分や他人に対しても強くなれるのですね。
私は、これが「心の勢い」だと思います。そして、これは吃音を改善していく上で、必要不可欠なものです。
モメンタムは、まだ医療のマインドフルネスではほとんど取り上げられていませんし、吃音の臨床にも出てきていません。
しかし、これからは必要な概念となりますので、これからすこしづつカウンセリングに取り入れていきたいと思います。