注意集中力と吃音の関係

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昨今、吃音の治療にマインドフルネスが用いられているのは皆さんご存知かと思います。
マインドフルネスは瞑想なので、何かジッとしてリラックスするようなイメージがありますが、マインドフルネスの最も重要な要素として「注意集中力」があります。
注意集中力の意味を調べると「ある対象に一定以上の注意を向け続ける力。スポーツ心理学では、雑念や妨害刺激にとらわれずに、競技そのものに注意を向け持続させることを注意集中と呼ぶ。注意集中力とは、あることを見続けたり聞き続けたり、やり続けたりすることができる力や気持ち。一種のゾーンに入ること。周りの状況が気にならなくなること。注意機能とは、多くの対象や体験の中から、特定のものを選択して、はっきりと意識する精神機能のこと。」と説明されています。

実は注意の集中と不安はとても密接なつながりがあります。うつや不安症のかたは、注意集中力が弱いことが分かっています。
メタ認知療法に「注意訓練法」というものがあり、私のグループカウンセリングでも時々行いますが、様々な音から一つの音を選び、注意を集中し続けるトレーニングです。
注意訓練法の方法は、
①注意の対象を選ぶ。(選択的注意)
②注意を切り替える。(注意の転換、切り替え)
③注意を分散させる。(注意の分割)
これをマインドフルネス瞑想に当てはめると、①はサマタ瞑想で、③はウッパサーナ瞑想となりますが、注意訓練法については、また別にブログに書きたいと思います。

先日、卓球の試合をテレビて観ていて、これは注意集中力が必要なスポーツだなと思いました。
一度ラリーが始まると、常に集中していないと、すぐに球が返ってきてしまいます。
多分、その時選手は「もしミスしたらどうしよう」などと考える余地はないはずです。常に、目の前の球に集中するしかありません。
不安は「思考」なので、そんなことを考えていたら身体の反応が遅れてポイントを取られてしまうでしょう。
もちろん、不安にならない選手はいないと思います。しかし、常日頃の練習や試合で、彼らは不安になるときでも「集中するトレーニング」を積んでいるのだと思います。
簡単なことではありません。しかし、これはトレーニング次第で身に着けられる能力なのです。

吃音の予期不安も、注意の集中でコントロールできます。
よく「話の内容に集中しよう」とか「相手の話に集中しよう」とアドバイスされると思いますが、これも一種の注意の転換と集中です。
吃音は「自己注目」と言って、自分に注意が向きすぎている状態なので、注意を自分の外に向けることによって、不安を減らせるのです。
「それがなかなか難しいんだよ!」と思うかもしれません。しかし、これも簡単ではないですが、トレーニングで可能です。

私には、はっきりと注意集中力が上がった体験があります。
吃音とは直接関係ないですが、30歳くらいの頃、ファミレスの厨房でアルバイトをしたことがあります。(ミュージシャンだったので、バイト生活でした)
ホールを選ばなかったのは、やはり吃音だったからで、バイトの選択肢は狭かったですね。(笑)
その厨房が、とても厳しいところで、同じ質問を二度する怒られる、モタモタしてると怒られる。当時の私にはキツイ職場でした。
慌てて熱い油の中に素手を突っ込んだこともあります。(笑)
(これは今考えれば、吃音だから働いた経験が乏しく、働き慣れていなかったからだと思います。)
何日か働いて「もう辞めよう」と思いましたが、このまま辞めるのも情けないと思い「どうなっても良いから、最後くらい真剣に働いてみよう!」と何故かその時思えたのです。
それまでは「先輩に何か言われないか?」と怯えながら仕事をしていましたが、最後の3時間は集中していました。
「何を言われても、目の前の仕事に集中しよう」と思っていました。
すると不安は起きませんでしたし、何も注意されませんでした。
たった3時間でしたが、やり切った感じはあり、集中できた手ごたえを感じていましたが、驚いたのは、怖かった先輩が「馬田さんは、今日は全然違ったね、もう辞めちゃうなんて勿体ない」と言ってくれたのです。今から思えば、それまでは私が集中力を欠いていたために、人に迷惑をかけていたのです。
他にもバイトをしていて、ハードな生活だったので、このバイトはそれで辞めてしまいましたが、ここまで集中したのは人生で初めての経験でした。
本当に、集中しているときは「自分の中に何もない状態」だったのです。
ここを辞めてからは、多少は元に戻りましたが(笑)とても良い経験だったと思います。

なぜ、この体験が大事だったかと言うと、注意集中力のない生活をずっとしてきたので、集中するということが実感として分かったということです。
同じように、私は幼いころから運動が苦手で、それも集中力が弱かったからだと思います。
運動での集中力が身についてきたのが、高校生になってからです。人よりだいぶ遅いですね。(笑)

もちろん、スポーツで集中力がついたり、仕事で集中力がついたりいしても、すぐに吃音が改善するわけではありません。
その注意集中力を吃音の改善に役立てる必要があります。
その一つが、どもっているときの身体感覚の観察です。
しっかりと集中して観察できているときは、不安になる余裕がありませんので、吃音の症状も出ません。
「そんなこと出来ないよ」と思うかもしれませんが、どもる時間はそんなに長くありません。
その時だけ集中していればいいので、これもトレーニング次第で可能だと思います。
マインドフルネスは筋トレと同じなので、トレーニングの質と量を高めれば、吃音の改善は可能です。

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