本当に好きなことは吃音を改善させる。

今回は、以前のクライアントさんでカウンセリングを終結したかたが、どんなプロセスを経たのか?についての投稿です。

このかたは、20代女性でしたが、私と話していても、ほとんど吃音は出ませんでした。
しかし、仕事で電話をするときは全く声が出なくなり、会社が吃音への理解もなかったので、精神的に追い詰められていました。
電話で声が出ないとき、パニック発作を起こして救急車で運ばれたこともあったそうです。
幼少期から「どもってはいけない」と家族から注意を受けていたので、いつでも言い換えが出来るように、言い換えノートを作って持ち歩いていたそうです。

ただ、このかたは、好きなことをとことん好きになる性格でした。
あるディズニーの映画が好きになり、その映画を見るために映画館に勤め、ビデオを買い、何と500回近く観たそうです。
そして、その映画の感想を手紙に書いて監督に出すために、英語を勉強したそうです。
いくら好きでも、同じ映画を500回も観られるのはすごいことですし、手紙を書くために英語を勉強することもすごいですね。
普通は同じ映画を何度も観ると飽きると思います。

この「飽きないで観る」ことができる力が「注意集中力」です。
同じことを繰り返しても「また同じか」ではなく「新しい発見がある」見方が出来る力です。

私が学んだ廣瀬カウンセリングも、小林秀雄の「美をもとめる心」という文章を何度も読み、感じたことをグループで話し合います。
廣瀬先生は、「何度読み返しても新しい発見がある」と仰っていました。
つまりそういう状態になると吃音が改善してくるということです。

このクライアントさんは、元々注意集中力が備わっていたのではないかと思います。
カウンセリングの回数は少なかったですが、吃音を隠す状態から、徐々に気にせずにどもることが出来るようになっていきました。
ある時「今日は友達の前で盛大にどもりました。気持ちよかったです!」とLINEが来たこともあります。

それから数週間して「カウンセリングを終わりにしたい」と連絡がありました。
「もう吃音で悩んでいないから」という理由でした。

そして、その過程も詳しく話してくれました。
ある時テレビで「指の障害のあるピアニスト」を取り上げていました。
私もたまたま見ていたのですが、そのピアニストは、ある病気で指が自由に動かなくなり、少ない指でピアノを弾かなければならなかったそうです。
しかし、そのピアニストは「この障害は神様からのギフトだ」と思ったそうです。
そして、音数は減ってしまうのを欠点として捉えるのではなく、一つの音を大事にするようにしたそうです。
確かにその音は心に響くものがありました。
今では、アメリカでも認められている有名なピアニストです。

そして、そのクライアントさんのすごいところは、そのテレビを見たすぐ後にチケットを取り、コンサートに行ったこと。
コンサートの後、楽屋に入り、その方とお話したそうです。
勿論、吃音の話もしたそうです。
そうしたら、吃音が悩みではなくなってしまったのですね。
今は、自分の好きは仕事に転職して、結婚もしています。

私も当初、この方がなぜ突然カウンセリングの終結になったのか?が分かりませんでした。
でも、マインドフルネスやACTを行うようになって、段々と分かってきました。

まず、吃音に対してオープンになったこと。どもったから何なの?と思えるようになったこと。
それから、吃音があっても人生の大切なものが失われることではないこと。
自分が何を大切に生きたいと思っているのか?が分かったこと。
ではないかと思います。

そして「注意集中力」があったこと。
これはマインドフルネスを行う上で一番大切なことです。

皆さんも、心底好きなことをしてるときは、時間を忘れ、吃音も忘れていませんか?
その時は、自分の意識は「今、ここ」にあり、過去や未来のことはあまり考えていないはずです。
それは、その好きなことに「注意」が向いているからです。
マインドフルネスは、その注意集中力を高めるトレーニングです。

その「注意集中力」を高めてコントロール出来るようになれば、吃音は改善します。

にほんブログ村 メンタルヘルスブログ 吃音症・言語障害へ


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です