吃音は遺伝だから治らないのか?

「吃音は遺伝だから治らない」
そう考えてしまう人は少なくありません。
実際、吃音の原因は約7割が遺伝的要因といわれています。
SNSでも「遺伝だから仕方ない」という声をよく見かけます。
ただ一方で、
「実感としてピンとこない」
「実際に改善している人もいる」
という事実もあります。
では本当に、吃音は「遺伝=変えられないもの」なのでしょうか?
遺伝子は変わらない、は本当か?
私たちはこれまで、
「遺伝子は変わらないもの」と教わってきました。
しかし近年、この前提が大きく変わってきています。
それが エピジェネティクス という考え方です。
これは簡単に言うと、
遺伝子そのものは変わらなくても、
「どの遺伝子が働くか」は環境によって変わる
という仕組みです。
心理的な要因も遺伝子に影響する
以前は、遺伝子に影響を与えるのは
気温や栄養など「物理的な環境」だけだと考えられていました。
しかし現在では、
- ストレス
- 社会的な環境
- 頭の中の思考(独り言)
といった心理的な要因も、遺伝子の働きに影響することが分かってきています。
例えば、
慢性的な不安やストレスを感じ続けると、
身体はそれを「危険な状態」と認識し、
遺伝子の働き方に変化が起きるとされています。
マインドフルネスと遺伝子の関係
さらに興味深いのは、
マインドフルネスに関する研究です。
マインドフルネスストレス低減法(MBSR)の研究では、
- 炎症
- 心血管疾患
- 神経変性疾患
などに関係する遺伝子の働きが抑えられるという結果が報告されています。
つまり、
心の状態を整えることが、
遺伝子の働きにも影響を与える可能性がある
ということです。
吃音とエピジェネティクスの可能性
では、吃音はどうなのでしょうか?
ある研究では、
- 発達障害の増加は遺伝子だけでは説明できない
- 乳幼児期の環境が遺伝子の働きに影響している可能性がある
と指摘されています。
また、
- 吃音が自然に治る子ども
- 吃音が残る子ども
の違いとして、
からかいやいじめなどの経験が関係している可能性も示されています。
吃音は「固定されたもの」ではない可能性
エピジェネティクスの重要なポイントは、
変化が「可逆的」である
という点です。
つまり、
- 一度症状が出ても改善する可能性がある
- 環境や経験によって回復する可能性がある
ということです。
この視点に立つと、
「遺伝だから治らない」というよりも、
遺伝+環境の相互作用で変化し続けるもの
と捉えることができます。
ただし、吃音は心理だけでは説明できない
ここは重要なポイントです。
吃音は単なる「気持ちの問題」ではありません。
研究では、
- ワーキングメモリーの使い方の違い
- 発声タイミングのズレ
- 脳のネットワークの違い
- 呼吸や喉頭のコントロールの不安定さ
など、生理的・神経的な違いも報告されています。
つまり、
心理だけでも、脳だけでも説明できない
のが吃音です。
ヒントは「独り言ではどもらない」
私が臨床で重視しているのは、
「独り言ではどもらない」
という事実です。
これはつまり、
- 同じ脳でも
- 心理的負荷が少ないと症状が出にくい
ことを意味します。
マインドフルネスというアプローチ
ここで有効になるのがマインドフルネスです。
マインドフルネスは、
- 頭の中の独り言(思考)を弱める
- 評価や不安を手放す
働きがあります。
ACTの視点で言えば「思考との距離をとる」ことです。
この状態は、
「独り言に近い状態」を意図的につくることとも言えます。
私の仮説:吃音は変化しうる
ここまでを踏まえた私の仮説はこうです。
- 吃音は遺伝と環境の両方で生じる
- 心理的要因が遺伝子の働きに影響する
- その変化は可逆的である
- マインドフルネスによって改善が起こる可能性がある
もちろん、これはまだ仮説の段階です。
ただ少なくとも言えるのは、
「遺伝だから変わらない」と決めつける必要はない
ということです。
まとめ:大切なのは「変化を見る視点」
もし「遺伝だから無理だ」と思い込んでしまうと、
小さな変化にも気づけなくなります。
しかし実際には、
- 状況によって話しやすさは変わる
- 環境によって症状は揺れる
という人は多いはずです。
その変化に気づき、広げていくこと。
それが、改善への現実的なアプローチだと思います。


