機械のように生きる。画家・石田徹也が描くマインドレスな世界。

石田徹也という画家をご存じでしょうか。1973年生まれで2005年没。31歳の若さで亡くなった画家です。
このかたの絵を観て、いろんな感じ方があると思うし、この石田徹也もそれでよいと思っていたそうなので、私なりの感じかたを書いてみます。
実は、以前からこの絵でマインドフルネスについてのブログを書きたいと思っていました。
たまたま今日、本屋でこの絵を見つけて題名を知り、画像を検索したところです。
題名は「燃料補給のような食事」です。


不気味な絵ですよね。奥の3人は牛丼チェーン店の定員さんみたいですね。そして、手に持っているのはガソリンスタンドの給油ノズル。定員さんの表情は無表情で、お客さんの顔は見えません。
皆さんは、この絵を観て何を感じるでしょうか?
私は、日常の食事風景をちょっと違った目線から描くとこうなるのかなと思いました。

つまり、私たちの食事は見ようによっては「燃料補給のようだ」ということです。

私はよく牛丼屋に行きます。そして、周りの風景を観察することがあるのですが、結構スマホを見ながら食べている人が多いですね。
それ自体はその人の自由ですが、味わって食べている、とか、食事を楽しんでいる、ようには見えないです。(そもそも牛丼屋にそれを求めていないかもしれませんが)
意識はスマホのバーチャルな世界に向いていて、目の前の食べるという「現実」はおざなりなのです。
このどこが問題かというと、現実を見ずにバーチャルな世界にいると「生きている実感」が乏しくなるということです。

「生きている実感」が乏しくなると、充実感が欠落してきます。
実際は「食べている」つもりでも、バーチャルな世界に入っていたり、頭の中の考え事に逃げ込んでいるため、フレッシュな情報や感覚がなくなってきます。

多くの人が「最近は年月が過ぎるのが早い」という話をしますが、これは「思考」によって「現実の感覚」が失われているからです。
子供の時は、毎日が新鮮で楽しく、時間の進み具合も遅かったはずです。
大人になると、すべてを概念や先入観で「判断」してしまう傾向が強くなるため、子供のころのウキウキした気持ちが失われてしまうのです。

マインドフルネスのトレーニングに「レーズンエクササイズ」というものがあります。
「食べる瞑想」とも呼ばれます。
レーズンを手に取り、初めて見たように眺め、口にいれて消化するところまで味わいます。
禅のお坊さんは、たくわんを音を立てずに食べますが、必然的にゆっくりと味わうことになります。
茶道や書道もそうですね。「味わう」過程を大切にします。
日本にはマインドフルネスの文化が根付いているのです。



では、私たちはなぜ頭の中に逃げ込んでしまうのでしょうか?

それは、「脳」は常に刺激を求めているからです。
そして、その「刺激」とは「ネガティブな思考」です。
脳はネガティブな思考が大好きなので、目の前のつまらない退屈な現実よりも、刺激的な思考を求めてしまうのです。
そうして、ある思考に飽きてきたら別の思考を始めます。
そうやって同じような思考をぐるぐると続けてしまうのです。

仏教、特に禅では、それを「迷い」と呼びます。
相手が話をしているのに、「つまらないから無視してしまおう」と心を閉ざしてしまう。
これを「無知の煩悩」といいます。
この「無知」とは。知らないという意味ではなく、自分の身体にどのような意識が働いているとか、どのような思考がうずまいているかといったこと知らないということです。

メタ認知療法に「注意訓練法」というトレーニングがあり、最近私のグループでも行っていますが、注意がすぐに逸れる人(注意力の足りない人)は、この「無知の煩悩」が大きい可能性が高いです。

さて、これを吃音カウンセリングに当てはめると、吃音の症状が出ているときは、話している実感、声を出している実感、呼吸をしている実感が薄れ、頭の中の思考に逃げ込んでいる状態だとも言えます。
この場合の思考とは「人からどう思われるかな?」とか「次の言葉は言いにくいかな」とかです。

つまり、この「燃料補給のような食事」のように、しゃべっている実感が少ない、会話を楽しんでいる実感がすくない、自分が何を言いたいのかも含めて機械のようになっている状態だとも言えます。

マインドフルネスは、この逆の文脈を作り出します。
つまり、話している実感、身体感覚、呼吸の感覚、相手の表情、相手の感情などを感じながら話している状態です。
もちろん、吃音の観察自体は日常で行うのは無理があります。
まずはカウンセリングの場で行い、吃音の理解のある人の前で徐々に広げていくのが大切です。

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