心が反応しない方法

悩みとは心の反応

心理学やカウンセリングは、心のトリセツのようなところがありますが、
禅も似たようなところがあります。
禅では、心のメカニズムを明らかにして、悩みを消す方法が明示されているのです。
それは、宗教というウェットなものではなく、むしろクールでドライな考え方です。

まず、仏教でいう悩みについてですが、
これは「外部からの刺激によって、心が反応すること。」となります。
そして、悩みを消す方法は「それに対してムダな反応をしない」ことになります。
至ってシンプルですね。

まずは現実を受け入れる

その無駄な反応をしない方法とは、なんでしょうか?

まずは、現実をあるがままに受け入れることです。

四苦八苦という言葉を聞いたことがありますか?
これは、ブッダが避けられない苦しみとしてあげた、生老病死(四苦)と愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五陰盛苦(全部で八苦)のことです。
詳しくはググっていただければ分かると思いますが、ブッダはこの現実をまずは受け入れようと提案したわけです。
大事なのは、「ある」ものを「ある」と認めることです。
「ある」と納得できれば、「ではどうする?」と次に進めます。

次に、悩みの正体を明らかにすること。

仏教の根本の教えに「四諦」というものがあります。
苦諦 生きることには苦しみが伴なう
集諦(じったい)苦しみには原因がある
滅諦 苦しみは滅することが出来る
道諦 苦しみを滅する方法がある

では、集諦(苦しみの原因)とはなんでしょうか?

苦しみの原因は心の反応

それが、心の反応です。
例えば、嫌なことを言われてつい怒ってしまい、人間関係を悪くしてしまう。
将来のことを考えて、つい不安になる。
この「つい」という部分が、心の反応です。
この「心の反応」をなくせば、悩みは消えていきます。


私達は、何か問題がおきたときに「乗り越えよう」「闘おう」「くじけちゃいけない」と思いがちです。
しかし、仮に乗り越えたとしても、次の問題はすぐにやってきます。
大事なのは、乗り越えたり、闘うのではなく、「ムダな反応しない」という考え方です。
吃音の場合、予期不安がおこってきて、症状が出る。
これも、外部からの刺激に対して「反応」しているわけです。
吃音と戦うのではなく、ムダな反応をしないようにすると、吃音は改善してきます。

では、反応しないようにするにはどうすればよいか?ですが、
これは、反応する原因を理解することです。
その原因は、主に「執着」です。
「執着」が満たされないときに、人は欲望に動かさて反応し、不満や悩みが生まれてくるからです。
「自分にはこのような執着がある」と、自分の心を理解することが大事です。

これは、吃音の場合、どもらずに話したい、人から良く思われたい、などになります。
これも、仏教の視点からすると「執着」となります。
たとえば、ひとり言や、動物に話しかけるときなどは、人からよく思われたいという執着がありませんので、どもりません。

心が反応しないためには

次に、道諦(苦しみを滅する方法)についてですが、

①自分の心を客観視する。
「今の自分はイライラしている。」「緊張している」など。
特に、緊張している時に「緊張してはいけない」と思うのは、逆効果です。
客観視するだけで、緊張は和らいできます。
「私は今、○○だから緊張している」と言葉にするだけで、反応から抜け出せて落ち着いてきます。
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)では、ネガティブな思考が出てきたら
「○○だと考えている。」と客観視します。これを「脱フュージョン」と言います。

②身体の感覚に注意を向ける
歩く時に、足裏の感覚を感じ取る。呼吸は、肺から気管を通って鼻から出る空気の流れを感じとる。
これは、今で言うマインドフルネスですね。
感覚を意識すると反応をリセットしやすくなります。
嫌なことがあっても、おいしいものを食べると機嫌が直ったりします。
これも、味覚によって反応がリセットされた状態です。
吃音の場合は、随伴運動をすると感覚に注意がいき、吃音という反応がリセットされることがあります。


③妄想をしないで、現実に向き合う。
妄想とは、想像したり、考えたり、思い出したり、ぼんやりと考えている状態です。あれこれと余計なことを考えているのは、妄想している状態です。
妄想をリセットするには、目の前の現実に向き合うことです。
例えば、しばらく目をつむってみましょう。いろんな考えが浮かんできます。
でも、そのほとんどは妄想です。思考が暴走しているのです。
次に、目を開けてください。目の前にあるのは、現実です。
さっきの妄想は存在していません。
私達は、普段目を開けていますが、ただぼんやりと見ているだけで、妄想していることが多いのです
五感を使って、目の前のあるがままを認めることが、妄想をリセットすることになります。これが、心の目を開くことです。
これもマインドフルネスで可能です。


④先入観や思い込みで「判断」しない
自分の考えは正しいと思い込むと、そうでない人に出会った場合、怒りになります。
逆に、「どうせ自分なんか」というのも思い込みです。
なぜ、判断したくなるかというと、それがラクだからです。
それ以上、深く考えなくても済むからです。

⑤プライドや虚栄心という「慢」を捨てる
自分の価値観にこだわり過ぎないことです。
これはカウンセリングでは、よく「自分の物差しで測らない」と言われます。
実は、劣等感や自信のなさも「慢」に当たります。
自分が正しいかどうかよりも、自分や周りが幸せになることなのか?の方が大事です。

⑥記憶に反応しない
記憶や過去がいつも頭にあると、その記憶を通して物事を見てしまいます。
これは吃音者に言えますね。人前で話す時に、どもりそうになりますが、
これは人前だからではなくて、過去にどもった記憶に心が反応してるのです。


仏教には「不動心」という言葉があります。
言葉の通り、動かない心です。悩まない心です。
そのためには、自分の心をよく見つめて、余計な反応しないことです。

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