TOMOOの歌詞に見る心理的柔軟性

先日、うちのグループカウンセリングのメンバーに「ブログが難解ではないか?」と、ご指摘をいただいたので、ちょっと気楽に書いてみます。
と言っても、やはりカウンセリングと関連して書いてしまいますが、、。
ちなみに、心理的柔軟性とはACT(’アクセプタンス&コミットメント・セラピー)で重要視される、心のしなやかさです。

皆さん、TOMOOさんというシンガーソングライターはご存知でしょうか?
私は、基本的には洋楽中心に聴きますが、邦楽だとここ数年は、藤井風、ado,羊文学が好きです。
そして、ここ数か月聴きまくっているのがTOMOO(トモオ)です。
どうも音楽業界的には、「ユーミンと中島みゆきの両方の才能を持つ」と絶賛されているそうです。
どれどれ、と思って聴いてみたらすっかり虜になってしまいました。
曲、詩、歌唱力、アレンジ、どれも素晴らしい。これから日本を代表するミュージシャンになる気がします。
バックの演奏も、打ち込み系が多い中で、ほぼ全部生演奏なので、アナログ好きの私には、耳に合います。
では、新しいアルバム「TWO MOON」の一曲目「Super Ball」をお聴きください。

いかがでしたでしょうか?

では、歌詞を見ながら、どこが心理的柔軟性なのか?見ていきましょう。(あくまで私の解釈です。)

Super Ball

大通りからそれて細道 この先ゆけばただの公園

昨日のことも 誰かの声も 今はオフ

おさまりのいい 綺麗なビルじゃ

まるで馴染まないちゃちなボールを

ポケットの中一個隠して歩いてる

真四角になれる素質なんて 誰も持っていないのに

はみ出して転がりだす迷路 君も同じならこの歌を

俯いたままで踊って 胸から飛び出す虹色

それでもときめくわけを「好き」をだまらせないで

賑わいのない遊具の陰に 砂利を探れば誰かのBB

”いさかいの種ならどこにでも”?

I know I know

誰かが今日こぼした溜息は 氷のつぶてになって降る

傘も持たず 今 君がいるなら 踊るように並んで歩こう

怖がりのまま踊ってあなたに見せたい虹色

”槍出せ 角出せ”はいらない 丸いままつらぬいて



少しずつ見ていきましょう。

「大通りからそれて細道 この先ゆけばただの公園
昨日のことも 誰かの声も 今はオフ」

人の多い大通りから、人気のない細い道に入り、ただの公園に出る。
いつも、人からの視線や評価を気にする日常から、一人になって一旦立ち止まる感じでしょうか?
昨日の記憶、過去に起こったことや、誰かの声(人に言われたこと)を今切り離している。
ACTでは、悩むことは過去のことを反芻することから始まる、そしてそれが「言葉」として、頭の中を駆け巡るから苦しくなると考えています。人から言われた嫌な言葉を何度も頭の中で繰り返すことはよくありますよね。
そして、その言葉を「オフ」にする「脱フュージョン」というマインドフルネス瞑想を使ったテクニックがあります。

「おさまりのいい 綺麗なビルじゃ

まるで馴染まないちゃちなボールを

ポケットの中一個隠して歩いてる」

「おさまりのいいきれいなビル」は四角く整ったビル。こうであるべ理想の姿でしょうか?
でも、自分はそれになじまないボール(大きなビルに対して小さなボール)を自分の中に隠している感じですかね。

「真四角になれる素質なんて 誰も持っていないのに

はみ出して転がりだす迷路 君も同じならこの歌を」

完璧になれることなんて、誰にも出来ないから、そこからはみ出して転がっていく不安定感かな?

「俯いたままで踊って 胸から飛び出す虹色

それでもときめくわけを 好きをだまらせないで」

この歌詞がすごいと思います。「俯いたままで踊って」とは、その不安感を持ちながらも、踊って(行動して)と聴こえます。
ACTでは、不安な心を持ちながらも、行動に移すことを重視しています。そもそも不安は消せないものだし、無理に消そうとすると逆に不安が増すと教えています。しかし、それでも行動すると、「胸から飛び出す虹色」のように希望が見えてくる。
また、ACTでは「価値」というプロセスがあり、自分が本当に好きなものに向かって生きていくことも重視しています。
「好き」をだまらせてはいけないのです。

ちょっと飛ばして、、
「”槍出せ 角出せ”はいらない 丸いままつらぬいて」
私たちは、物事がうまくいかないとき、怒りが出て、なにかに当たったり、自分を強く見せようとします。
また、完璧に見せたい自分もいますね。
でも、本当は「丸い」自分。自分を大きく見せたり、強く見せるのではなく、ありのままでつらぬくことの大切さを教えているように感じます。
ACTには「コミットされた行為」というプロセスがあります。自分の「好き」なことを、行動に移すと自分に約束することです。約束するのは「つらぬく」ことになりますね。

いかがでしたでしょうか?
かなりこじつけかもしれませんが、私なりにACTのコンセプトと照らし合わせてみました。
歌詞は時代を表すと言いますが、この曲の言いたいことも、これからの時代に大切なものがあると感じます。
またACTも、「悪いところや不安な気持ちが消さなければならない」という、従来の心理学の考えから「不安を受け入れる」という最近の流れを代表する新しい考え方です。

音楽(芸術)と心理学は時代を表していると思います。

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