注意訓練法を活用して、不安のない毎日を

Melani MarfeldによるPixabayからの画像

不安に呑み込まれやすい人は、注意集中力が弱い

注意訓練法は「メタ認知療法」に基づく技法のひとつです。エイドリアン・ウェルズによって1990年に開発されました。

実はうつや、不安症のかたは、注意集中力が弱いことが分かっています。
カウンセリングで、クライアントさんにそのことを話すと、「自分は集中力が弱い」と仰る人が多いです。
例えば不安症のかたは「自分なんかダメな人間だ」とか「バカだと思われたらいやだな」という、思考が頭をよぎると、それに囚われやすくなってしまうのです。
このようにネガティブな感情を抱いているときは、仕事をしていても集中できなかったり、本を見ていても内容が入ってこなかったり、注意がネガティブな感情からなかなか切り替わらないことがあります。
元々、人間の脳は、ネガティブな感情に注意を向けやすいため、その状態を抜け出すのが難しいのです。

そこで注意訓練法では、注意を自分で選び(選択的注意)自分で切り替え(注意の転換・切り替え)分散させる(注意の分割)といったトレーニングを行うことで、自分の注意をコントロールしやすくします。
注意訓練法によって自分のネガティブな思考以外のものに注意を向けるようになると、自分の欠点を無理に何とかしようとせず、必要な行動をできるようになり、結果的に不安や緊張を回避して対応しやすくなります。

自己注目が過度に高いと不安障害になりやすい

以前のクライアントさんで、「自分はコロッセウムの中にいるようだ」と、言った人がいました。
コロッセウムとは、ローマ帝政期に造られた円形闘技場 ですね。つまり、競技場の中に自分がいて、まわりから注目されている状態のことです。
これは「まわりは自分のことを注目しているに違いない」と思い込んでいるわけですね。これは「自己注目」が高い状態です。
「自己注目」とは、自分の内的状況に注意が向いている状態、つまりは自分で自分を注目の的にしている状態を指します。
適度であれば問題ありませんが、不安障害の方は自己注目が過度に高くなっていることが報告されています。
そして、注意訓練法を行うと、自己注目が低下することが分かっています。
つまり、「自分なんかダメな人間だ」とか「バカだと思われたらいやだな」といった強い自意識により不安や緊張が高まってしまう場合は、注意訓練法によって、自分への強い意識を解放できる可能性があります。

注意訓練法の行い方

注意訓練法の実践方法は、以下の3段階に分かれます。

①注意を向ける対象を選ぶ(選択的注意)
②対象を切り替える(注意の転換・切り替え)
③注意を分散させる(注意の分割)

実際は周囲の音を活用して行うのが一般的です。たとえば、公園で「風が吹く音」「鳥のさえずり」「人の話し声」「車の音」などが活用できます。
まずは①注意を向ける対象を選ぶ「選択的注意」を行い、複数の音の中からひとつの音に注意を向けます。(例、風が吹く音)
次は②対象を切り替えます「注意の転換・切り替え」(例、鳥のさえずりから、人の話し声、車の音)
慣れてきたら、切り替える時間を短くします。
最後に注意を分散させます「注意の分割」すべての音に注意を向けて、同時に聴きます。

この「注意の分割」は、最初はなかなか難しいです。
これは、私たちの「脳の注意資源」は割と限られていて、まわりの音すべてに注意を向けると、資源を使い切ってしまうからです。
つまり、余裕がなく一杯一杯の状態になってしまうのですね。
しかし、それもねらい目で、注意資源を使い切っている状態は、考える余裕がなく、自分に意識を向けることも出来ないわけです。
だから、不安になりにくいのですね。
吃音者も、何かに集中していて考える余地のないときは、どもらないことがありますね。
吃音の不安も、「自己注目」からきていると思われます。だから外部に注意を向けるのは有効です。
注意訓練法は「メタ認知療法」のトレーニングですが、マインドフルネスに似ています。
特に、仏教の「ウッパサーナ瞑想」(観察瞑想)に似ていますね。
ちなみに、私はこれをアレンジして「音楽を聴くときに、楽器別に聴く」ことを行っています。
例えば、最初の8小節は「ギター」次の8小節は「ボーカル」最後は全部の楽器を平等に聴く、という風に。
そういう意味では、特定の楽器の音を耳で拾ってコピーするのは、よい注意訓練法のトレーニングになっていると思います。

注意訓練法の効果

注意訓練法は、1つの考えや感情に固執した結果、生じる苦痛に効果を発揮します。例えば、不安にとらわれる「不安障害」、抑うつにとらわれる「大うつ病」、強迫観念にとらわれる「強迫性障害」、トラウマ体験にとらわれる「PTSD」などの症状を和らげる効果が様々な研究から明らかになっています。もちろん、精神疾患を抱えていなくても注意訓練法は役立ちます。例えば、「大事な場面でいつも緊張して実力を出し切れない」「集中すべきときに余計なことに注意が逸れてしまう」といった日常の悩みも注意訓練法に取り組むと軽減することができます。(コグラボより
吃音も、本来不安に取り込まれている状態のため、注意訓練法は有効だと言えます。

注意訓練法の注意点

気持ちが落ち着いているときに行う

不安なときに注意訓練法を練習しようとすると、嫌な気持ちから逃げるために注意訓練法行うことになってしまいます。
その結果、「体験の回避」(嫌な感情をコントロールしようとして、余計に囚われてしまう)になってしまう可能性があります。
ネガティブな感情から注意を離すために取り組んでいたはずの練習が、いつの間にかネガティブな感情に囚われてしまうのです。

注意訓練法の練習は気持ちが落ち着いているときに行うのがおすすめです。1日のなかで練習する時間を決めておくのも良いでしょう。

雑念に抵抗しない

練習中、雑念が浮かんで音に集中できないときがあるかもしれません。しかし、「雑念をなくさなきゃ」と焦るとかえってとらわれてしまいます。「雑念が浮かんだな」と思って受け流し、音に注意を戻せれば大丈夫です。(これもマインドフルネスと同じですね)

音が鳴っていない間も注意を向ける

鳥のさえずりのように断続的な音は、音が鳴っているときだけでなく、音が鳴っていないときにも注意を向け続けることが大切です。(コグラボより

最後に、私がいつもカウンセリングで使用している動画をご紹介します。
早稲田大学人間科学学術院の大月 友(オオツキトム)教授がコンテンツの制作を行なっいる、CBSチャンネルからです。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です