暴露療法で吃音は治るか?

最近なかなか忙しくて、隙間を見つけてブログを書いておりますが、今日は暴露療法について書いてみます。
私は、心理学でも暴露療法にはあまり縁がなくて、最初聞いたとき「一体自分の何を暴露するんだ?」と思った記憶があります。(笑)
しかし、大切な療法なのでおさらいの意味で調べてみました。

以下、元住吉こころクリニックHPより引用です。

暴露療法とは、ざっくり言ってしまうと不安に慣らせていく治療法です。
原理としては、苦手なものに暴露された時に感じる不安の「2つの慣れ」があります。

  • 不安は一時的に上昇するものの、時間と共に減っていく
  • 何度も練習していくうちに、不安の大きさが全体的に小さくなる

暴露療法では、不安や不快感の程度をSUD(Subjective Unit of Distress)という表し方をします。もっとも強い不安を100点として、不安の程度を相対的に点数化していきます。点数にすることで、不安が軽減していくのを目に見える形にするのは大切なことです。

苦手なものに暴露された時の不安の点数の変化をみていくと、上記の2つの特徴があることがハッキリします。まずは取りくみやすいものから、実際に暴露してみて実験すると、不安の性質が理解できます。
暴露反応を始めていく前に、患者さんの取っている行動をしっかりと見極める必要があります。そして、どのようにしてアプローチしていくのが治療的なのかを考えていく必要があります。そのためには、2つの分析が必要です。

  • 刺激と反応の関係を具体的に整理して分析
  • さまざまな問題での刺激と反応の関係を分析

効果的に進めていく方法として。

①褒めること。
もっとも効果的で大切なことは、「褒めること」です。こういう言い方をすると、医者は上から目線だと受け止められてしまうかもしれませんが、非常に大切なことです。人のモチベーションを維持していく上で最も効果的なことは「褒めること」なのです。

②モデルになる。
人は社会の中で学習していきます。誰かをみて学び、それを真似することで行動しやすくなります。ですから医師や看護師などがモデルとなって実践し、それを患者さんにその通りにやっていただくというモデリングという方法があります。行動ができずに暴露療法が進まなくなってしまった場合は、このように治療者がモデルになるのも一つの方法です。

③自分の行動を記録する。
自分自身の行動を観察して、それを記録して評価していくことは、それ自体にとても意味があります。暴露療法の進み具合を評価することもできますし、自分自身の症状に対する理解も深まっていきます。記録をとることでモチベーションも維持されやすいですし、上手くいったことに対する達成感も得られやすいです。このようなセルフモニタリングは、暴露療法を効率的に進めていく一つの武器になります。

④動作にともなった確認をする。
暴露療法では、不安から逃れるために安全行動をとってしまう時は反応妨害をしていきます。しかしながら、どうしても確認行動をを取り除けないこともあります。そのような時は、まずは確認をできるだけ少なくして生活への支障がないことを目指します。例えば外出時に家の鍵を6回も7回もかけてしまうのならば、1~2回であれば生活への支障はなくなってきます。そのような時には、動作をともなった確認をするようにします。鍵がかかったことを指さし確認することで、さらなる確認行動をガマンしやすくなります。本来の暴露療法では確認行動をいっさい行わないようにしますが、現実的にはこのようにステップを踏んでいくこともあります。
(引用はここまで)

暴露療法は、行動療法の中でも最も古くから行われていて、今でも行われているということは、有効だからだと思います。
ただ、ここで注意しなければならないのは、焦って我流で始めてしまうと、段階的に慣らしていくプロセスを急に行ってしまい、逆効果になる場合があることです。
一度不安が増大してしまうと、取りかえすのが大変ですから注意する必要があります。出来るだけ専門家に指導してもらった方がよいでしょう。

さて、今度は、私が行っているACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の観点から見てみます。
ACTも、源流は行動分析学ですから、暴露療法とは繋がりがあります。
但し、「従来の暴露療法の目標は,、症状の軽減や除去なのに対して、ACTの目標は、コミットされた行為(自分の価値に基づいた行動)を継続するときの心理的柔軟性です。」(ACT第二版、マインドフルな変化のためのプロセスと実践。2022)
つまり、従来の暴露療法は嫌な症状(吃音者ならどもることや、どもって恥ずかしい思いをすること)をなくすか、少なくするのが目的なのに対して、ACTの暴露療法は、しなやかに受け止めて、自分の人生を前に進めていく手段だということです。つまりどもりながらでも、やりたいことをするということです。
具体的には、暴露療法を進めながら、自分の思考をありのままに観察したり、思考と自分を切り離す(脱フュージョン)ことです。
大事なのは「苦痛な状況にとどまりながら、個人的な価値に目を向け、それにともなって行動すること」(ACT第二版、マインドフルな変化のためのプロセスと実践。2022)
ACTは、したいことをするのが自分の人生にとって一番重要なので、以前なら諦めていた状況でも、柔軟に受け入れて、やりたいことをやっていく非常にアクティブな療法です。(ここは森田療法に似てますね)
私は、従来の暴露療法は不安を消すという消極的なモチベーションなのに対して、ACTはやりたいことをやるために受け入れるという積極的なモチベーションを生むのではないかと思っています。
また、吃音に関しては、症状の軽減も期待できますが、これも人生の目標に注意を向けていけば、相対的に吃音に注意が向かなくなるからではないかと思います。
よく言われる「吃音よりも大事なものがある」ですね。
また、マインドフルネスによって身体感覚に注意が向くのも大切な要素だと思います。

さて、最初のタイトルである「暴露療法で吃音は治るか?」に関しては、従来の暴露療法は決定打にはならないと思います。(うまくいけば治るとは思いますが)
ACTには、苦手なものを否定しようとすると、益々つながりが強くなってしまうという考え方があります。
つまり、苦手なものに取り組むことによって、余計にそれに意識が向いてしまうということです。
この場合「苦手なものはよくないものだから、なんとかしなくては。。」という意識が根底にあります。
「緊張してはいけない」と、緊張を否定すると、余計に緊張してしまうことと同じです。
しかし「緊張は悪いものではないよね」と認めてしまうと、余計には緊張しなくなります。
従来の暴露療法は、刺激と反応を分析するのに対して、ACTは、そのままにしておき、刺激に対して過剰な反応をしないようにしてきます。
そのためには、あるがままを知覚して判断を下さないというマインドフルネスの考え方が良いように個人的には思います。

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