吃音と面接

先日、吃音カウンセラーの大先輩にちょっと相談の電話をした時に、
「カウンセリングに来る人は、いつも切羽詰まってから来る」という話になり、
じゃあ、いつが切羽詰まった時か?と言えば、受験や就職の面接の時だねと言われました。
学生時代は、環境にもよりますが、それなりに誤魔化して生活出来るので、吃音の不安は漠然としたものですが、面接を前にすると、さすがに何とかしないと、となりカウンセリングに来る人が
増えるのですね。
本当は、吃音のカウンセリングはそれなりに時間がかかるので、早い方がいいのですが、そういう私も何も考えずに就職活動に入ったので、今日はその体験を書いてみたいと思います。
最初にお断りしておきますが、私のケースはかなりレアなので、ご参考にはならないと思います。(笑)

私は、幼稚園の時から吃音で、名前も言えず、電話も出来なかったので、将来、社会人として働くというイメージが全くありませんでした。
今のように「合理的配慮」などまったくありませんでしたから、、。
いくつかの、改善方法や言葉の教室、催眠療法などを試してみましたが、効果はなし。
ただ、フリートークでは言い換えを使い、それなりに喋れていましたので、大学では不便はありませんでした。

もともと、美大だったこともあり、あまり就職活動もしていなかったのですが、さすがに、あと2カ月で卒業となって、やむを得ず3社の面接を受けました。
今回は、その2社目のお話です。

受けたのは、当時国内第二位の布団メーカーの「○八○綿」です。
企画部の応募4人に対し、30人くらい面接に来ていたと思います。
私は、卒業制作の絵を持っていきました。

私の順番になって、一人で部屋に入り、面接官は、会長、企画部長、係長、人事部長と
そうそうたる顔ぶれ。
早速、私は名前を言う時に盛大にどもりました。

この会社は、割とざっくばらんな人が多いらしく、言いたいことははっきりと言います。
私の卒業制作を見て「これが卒業制作なの?あまり良くないね。」と言われました。
確かに、当時真面目に絵を描いていなかったので、そう言われたのは当然だと思います。

その後、いくつか質問を受けたのですが、緊張と吃音の不安で、萎縮してしまい、
自分をアピールすることが出来ませんでした。

すると、突然会長が「君は女は大きい方が好きか?小さい方が好きか?」と訊いてきたのです。
真面目な顔でです。。
今なら問題発言かもしれませんね。(笑)

それに対し、私も咄嗟に「大きい方が好きです!」と答えたのですね。
自分でも、なぜ反射的に答えたのか分かりませんが、、。

結果、(後で聞いたのですが)トップで合格でした。(笑)

この会社は、中途でしか採用しません。他で行きずまって、もう後がない人を採用するわけです。
会長も、裸一貫から会社を興し、大企業にした人でした。
少し変わった会社ではあったのですね。

それにしても、会長のあの発言。。
今から思うと「きっとこいつは萎縮してるけど、本当は何やりそうだな」と思ったのでしょうか?

それはどうであれ、吃音の私は、無事に入社した訳です。

とは言え、自分をアピールすることが出来ない私は、研修でも上司に小馬鹿にされていました。
毎日「だから美大はだめなんだよ」と、、。
(実際、みんなとは言いませんが、美大生はプライドが高く、会社になじまない人は多いと思います)
数日経ってから、入社式があり、そのあとカラオケを歌うことになりました。
私は何か変な歌を歌った覚えがあります。
(当時、洋楽ばかり聴いていて、カラオケなど行ったことがなかったからです。)
その上司に「変な歌だ!」とまた文句を言われました。
その時に、酔っていたせいもありますが、なぜかスイッチが入って
「この曲が好きなんですよ!」と、その上司を睨み返したのですね。
今なら、絶対にそんなこと言いませんが、、。
すると、その上司は「そうか!お前は好きなのか!はっきりしていて、それはお前のいいところだな!!」とすごくほめてくれたのです。
それから、私に対する態度も変わりました。

結局、私はプロのミュージシャンになる夢があったので、会社は3週間の研修のみで
退社しました。両立は無理だと判断したからです。
その上司に辞めると電話した時に、「とても残念だ、お前に一番期待していた。でも
プロになるなら頑張れ!」と言ってくれました。

当時、この会社は業界一位の「○川布団」に追いつくため、新しい発想を求めていたそうです。
だから、普通に優秀な人より、ダメでも変わった人、を求めていたのですね。
私の性格が、たまたまそこにはまった訳です。
ですから、皆さんの参考にはなりません。(笑)

私の場合、就職に吃音は関係なかったと思います。
会社は、流暢に話す社員より、何か変わった発想を持つ社員を求めていたからです。
それと、上司に気にいられる社員より、言いたいことをはっきり主張する社員が
必要だったのですね。

一概には言えませんが、私達吃音者は「吃音だから○○」と思いがちですが、
相手は気にしていないことは多々あります。
むしろ、自分が気にしていて、萎縮していたり、やるべき努力をやっていなかったり。
(私の場合は、ちゃんと絵を描いていなかった)
気にすることは、吃音ではなく他にあるのかもしれませんね。



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