否定から始めない生き方

「反戦運動には参加しないが、平和運動なら参加する」
この言葉は、マザーテレサの姿勢を象徴するものとして、よく紹介されます。
事実関係の細部はさておき、この言葉が今も多くの人に響くのは、
**「否定から始めない生き方」**を示しているからではないでしょうか。
彼女は、戦争や暴力への怒りがなかったわけではないはずです。
それでも彼女は、怒りを原動力にするのではなく、
**「どんな世界を大切にしたいか」**という方向を選び続けました。
ネガティブな感情は、なくさなくていい
私たちはつい、こう考えがちです。
- 不安は悪いもの
- 怒りは手放すべきもの
- 恐れは克服しなければならない
でも、現実にはそれらを完全になくすことはできません。
無理に押し込めようとすると、かえって苦しくなることも多い。
近年の心理学では、
ネガティブな感情を排除しないまま、どう生きるか
という考え方が重視されるようになっています。
大切なのは、
「不安があるかどうか」ではなく、
「不安があっても、何を大事にして行動するか」
なのです。
批判が中心になると、未来が見えなくなる
この視点で社会を見てみると、気づくことがあります。
政治や社会運動で、
「何が間違っているか」
「誰が悪いか」
という言葉ばかりが前に出ると、空気は次第に重くなります。
批判は必要です。
けれど、それだけでは人は動き続けられません。
人が本当に力を出すのは、
「こうありたい」「こんな社会を生きたい」
という価値が示されたときです。
それは、個人の人生でも、社会全体でも同じだと思います。
オリンピックが教えてくれたこと
スポーツの場面では、それが分かりやすく表れます。
オリンピックでは、勝敗や国の違いを超えて、
互いの努力を讃え合う姿が見られます。
そこには、
- 相手を否定しない
- 弱さや限界を含めて人間を尊重する
- 「勝つこと」以上の価値を共有する
という空気があります。
恐れや緊張がゼロの選手はいません。
それでも彼らは、それらを抱えたまま競技に向かいます。
感情を消すのではなく、意味のある方向へ進む。
それが、人の姿を美しく見せるのだと思います。
今、私たちに問われていること
マザーテレサの姿勢、
現代の心理学の考え方、
そしてスポーツの世界。
これらに共通しているのは、とてもシンプルな問いです。
「嫌な気持ちがなくなったら生きる」のではなく
「嫌な気持ちがあっても、何を大切に生きるのか」
分断や対立は、強い感情を生みます。
でも、それだけでは長くは続きません。
怒りや不安を否定せず、
そのうえで「どんな価値を選ぶか」。
時代は今、
排除ではなく、価値を軸にした生き方
を求めているのかもしれません。

