真剣に聴くと吃音が改善する

今回は、吃音とは一見関係ないようですが、カウンセリングにとても大切な「聴く」ということについて書きたいと思います。
とは言っても、吃音のカウンセリングに於いても「聴く」ことはとても重要だし、吃音の改善にも大きく関わってきます。
つまり、聴く力を強くすることで吃音が改善していくということです。

まず、「きく」には3種類あります。
①聞く 耳で聞く 音声が届いている 英語ではhear
②訊く 口で訊く 相手の情報が欲しいので訊いていく 英語ではask
③聴く 心で聴く 向こう側にある気持ちを聴く 英語ではlisten

カウンセリングでいう、「きく」(傾聴)とは③です。

私は最初あるセルフヘルプグループで吃音のカウンセリングを受けましたが、
その時に驚いたのは「自分の話をこんなに真剣に聴いてくれる人がいるのか」でした。
どんなに些細なことでも、一生懸命に聴いてくれる。
それは初めての体験だったかもしれません。
「この人は今すべてをかけて自分の話を聴いてくれている」と感じ、それだけで少し感動したのです。
なんだか相手が自分の中に入り込んでくる感じで、自分の中で一緒に感じてくれているような感触です。
相手も同じ吃音者でしたから、私の苦しい気持ちに共感したこともあったのでしょうね。

では、なぜこれが吃音と関係あるのか?ですが
皆さんはどもりそうなときやどもっているときはどんなことを頭で考えていますか?
「どうしよう」「はずかしい」「やだな」
そんな感じでしょうか?



では、それに主語を付けてください。
全部「私が」になりませんか?
私はどうしようと思っている。
私ははずかしい。
私はやだなと思っている。
ですよね。
つまり、自分のことでいっぱいいっぱいな状態です。

これを変えていくのが、「聴く」ということになります。

さきほどのように相手の中に入り込むくらい集中が出来れば、
その時は相手のことに集中していて「自分」がない訳です。
したがって、余計なことを考えないので、吃音も最小限になります。
もちろん簡単なことではありません。
でも、短い時間なら出来ます。
皆さんも、目の前で人が転んだらとっさに助けようと思いますよね。


その時は「自分」はないと思うのです。
余計なことは考えず、ただシンプルに助けたいだけ。
逆にどもっているときは余計なことを沢山考えていませんか?
その大元が「自分」です。
「自分」をできるだけ小さくしていく。周りや相手のことを深く考えていく。
そこに吃音改善の秘訣があります。

そして、聴くということは、相手のことを大切に思う愛情の現れでもあります。
私はいつも吃音だけ切り離していては、なかなか改善しないと言っているのは、
この「相手を思う心」を育てなければならないと考えているからです。

実は、今日初めてグループカウンセリングを行いました。
今までは、個別のカウンセリングだけでしたが、これからはグループカウンセリングも併用していきます。
このグループカウンセリングの良いところは、吃音者どうしがお互いに話を聴くところにあります。
お互いに悩みを話す、共感する、真剣に話を聴く、その時に自分(我)というものが小さくなる瞬間があるのです。
今日参加してくださったかたも、とてもよかったと言ってくださいました。
もちろんこれはカウンセリングでなくても、どんな団体でも可能です。
ただ、修練を積んだカウンセラーがいないと話がずれてしまって実りのない話し合いになることも多いです。

ここで「聴く」ことについてのたとえ話をしましょう。
「ある仏教の学者が、とても偉いお坊さんに話を聴こうとお寺を訪れた。
とても気難しいお坊さんだと聞いていたので、学者は緊張していた。
お坊さんは、まずお茶でも、と言ってお湯を沸かし急須にお湯を注ぎ始めた。
注いだお湯が一杯になり、こぼれだしてもお坊さんは注ぐのをやめなかった。
学者はこれになんの意味があるのか?と考えてしまい。そのことで頭が一杯になってしまった。
お坊さんは、お湯のこぼれた急須を差し、これが今のあなたです。
考えることでいっぱいになり、もう私の話を聴くことはできない。
今日はもうお帰りなさい。と言ってその学者を帰した。学者はひどく落ち込んで帰っていった。」
吃音者はこのこぼれた急須のような状態(自分のことで頭がいっぱい)になっていることが多いのです。


また、私の吃音カウンセリングの先生は「いつまでも自分の吃音が一番大事では何も変化はおこならいのです。」
とおっしゃっていました。
吃音で悩んでいるからカウンセリングに来ているので、自分の吃音がどうなるか?が一番大事なのは当然のことですが、
いつまでもその「自分の都合」に執着していると、何も変化がおこらない。
自分を起点とした認識から離れていかないと変化はおこらないのです。
逆に言えば、そこから自由になったとき、吃音に変化が現れます。

相手の話を自分を起点としない立場から聴く、相手に同化する。
それが少しづつ出来てくると、吃音の悩み方も変わってきますし、吃音自体にも変化が出てくる。
私自身それでかなり改善しましたし、クライアントさんにも変化は現れています。
また、聴く力をつけると吃音だけではなく、仕事や人間関係などに大きくプラスになるので
皆さんもぜひ実践してみてはいかがでしょうか。

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