鬼滅の刃 無限列車編を観て。

先ほど、テレビで「鬼滅の刃 無限列車編」を見ていたので、それについてカウンセリングの立場から書いてみたいと思います。(少しネタバレも含みますのでご注意を)
鬼滅の刃はそれほど詳しいわけではないのですが、漫画は全部読みました。
この映画も以前一回観ていて、面白かったのですが、自分のカウンセリングのアプローチが今まで変化してきた中で見ると映画の見かたも変わってきていて、ハッとしました。

ストーリーをすごく簡単に説明すると、主人公の炭治郎たちは「無限列車」に乗り込み、鬼殺隊最高位の剣士で柱のひとりである炎柱の煉獄杏寿郎と共に、列車に潜む鬼と対峙するというものです。

この列車には魘夢(えんむ)という相手を夢の中に閉じ込めることで、その人がもつ「精神の核」を破壊、その人を無力化する血鬼術をもつ鬼が乗っていて、しかも列車と一体化しています。

鬼殺隊も全員が眠らされるのですが、煉獄さんが起きた時の「よもやよもや」という名ぜりふは有名ですね。(笑)

炭治郎も眠らされ、殺されたはずの家族と幸せな日々を送る夢を見せられます。
(現実にはない幸せを見せられる、この辺はちょっとマトリックスみたいです)
それで本来の任務を忘れてしまうのですが、何とか夢の中で自分の首を切り、夢から覚めます。
その後、魘夢と戦うのですが、魘夢も負けじと炭治郎に何度も夢を見せます。
炭治郎は「覚醒しろ!」と自分に何度も言い聞かせ、首を何度も切り、覚醒しながら戦い続け、最後は勝つことができます。

私がハッとしたのは、この「覚醒しろ」という炭治郎の言葉です。
私達は常に「現実」の中にいると思いがちですが、実は「現実」を見続けるのは並大抵のことではありません。
つまり、目の前の現実を見ずに、頭の中の「思考」に走っていることも多いのです。
例えば、目の前にある自分の手をじっと見てください。
多分、30秒もしないうちに「思考」が始まります。
「なんでこんなことをしてるんだ。」
「この後何を食べようかな。」
「随分と手が荒れてるな。」とか、、。
この「思考」をしている時は、目の前の現実を見ているようで見ていません。
この場合は手を見ていないことになります。
目の前の今の現実よりも、頭の中の思考が優位に立っています。
これをカウンセリングでは「頭の中のおしゃべり」とも言います。
この「思考」は、自分を表現するのに役にたったり、他者と知識を分かち合うのに役立ちます。人が社会生活を送る上で大切な能力です。
しかしその反面、過去のつらい出来事を再体験する、自分の他者を比較、判断、批判する、推測する、心配する、空想する面もあります。

つまり「思考」は、人間にとって「祝福」でもあり「呪詛」でもあるのです。

これに対し「マインドフルネス」は、思考ではなく、気づきというプロセスです。
思考に巻き込まれるのではなく、「今の瞬間」自分が体験していることに気づく
あるいは注意を向けることです。
それは例え自分にとってつらい場面であってもです。

炭治郎の「覚醒しろ!」もまさにこれで、夢を見させられていることから
現実の自分を取り戻すことだと思うのです。
例えば、お酒を飲んで楽しくなるのは、普段の現実を忘れるからで、短期的には問題は解決しますが、長期的に問題が解決するわけではありません。
お酒が悪い訳ではありませんが、目の前の現実を回避すると、長期的には問題はより深くなるものです。

吃音の場合も同じで、頭の中のおしゃべりが始まっています。
「どもったらどう思われるかな?」
「この人の前だとどもりそうだな」など、、。
思考がさらに暴走すると、限界を超えて頭が真っ白になったりします。

だからこそ「マインドフルネス」なのです。
目の前の現実への覚醒、もしくは心の目を開くことですね。
もちろん、うまくいかない場合が多いですが、トレーニングすれば出来るようになります。

ちなみに、鬼滅の刃の作者は心理学に詳しいのではないでしょうか?
人の心の奥に踏み込んだ作品だからです。
また、仏教的でもありますね。
炭治郎の、鬼にまで優しい心は慈悲の心ですし、映画の最後に出て来る強敵の猗窩座(あかざ)は、煉獄杏寿郎に「鬼になれば、永遠の命が得られる」と鬼になるのを勧められますが「老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ」とそれを断ります。
これは「諸行無常」の理ですね。
全てのものはいずれ滅んでいく、だからこそ美しいという捉え方です。

実は、カウンセリングでも様々な感情は永遠には続かないと言われます。
どんな苦しくても、すべてはいずれ消えてなくなるもの。
よく「水に流す」と言いますね。感情は水のように流れて消えていくものなのです。

久しぶりに見た、「鬼滅の刃」、楽しませていただきました。
テレビシリーズが始まるようですね。楽しみです。

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鬼滅の刃 無限列車編を観て。” に対して2件のコメントがあります。

  1. 梅本和正 より:

    映画を見ながらカウンセリングを考えているのも「頭のなかのおしゃべり」かな(笑)?廣瀬カウンセリングでは「心の目」ではなく「内臓感覚」ですね。おしゃべりをしていたら、刃で切られてしまいます。内臓感覚で殺気を感じると同時に相手を切らないと切り殺されてしまいます。吃音治療も真剣勝負ですね。

    1. stardust より:

      コメントありがとうございます。確かに切り合いで考えていたら切られますね。(笑)カウンセリングも真剣勝負です。
      廣瀬カウンセリングでも「心の目」で良いと思いますよ。「春の日冬の日」に「自分そのものになることによってそのものが分かる、それが心の目」とありますね。
      心の目が開いていないと、内臓感覚も分からないということなのではないでしょうか。

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